イリヤの空、UFOの夏

全編通して読み終わった。若いって良いなあ。
読後感が非常に良い。これは全体を通しての話でもあり、各エピソードごとの話でもある。逆に言えば、1エピソードを読み終わったとき、そこで満足してしまい次を読み始める気にならないというか。そもそも次へ次へっていう感じの引きはそんなに強くないので、なんか読みはじめにくい。静止摩擦係数が大きい感じ。読んでるときは(邪魔の入りにくい環境というのもあるが)あまり時間を気にせず一気に読んでいる。
一番最初に(馬から落馬したみたいな感じで変だな)感じた違和感は、主人公、浅羽の立ち位置。浅羽が水前寺と晶穂の中間的な位置ではなく割りと積極的に水前寺よりなのに言いようのない違和感がある。晶穂がもうちょっと「強い」キャラでも良かったかも。それでも3巻の番外編とか、過去に水前寺の家に行った話とかの中ではあんまり違和感もなかったな。慣れたのかな。
教室なんかのシーンで視点の切り替えがうまくいかなかった。カメラが固定されていて回転するような場合はいいんだけど、カメラの位置が動くような場合どうしても引っ掛かりを感じてしまう。これは同時登場人数が少ない場合には発生してなくて、それゆえ後半は読みやすかった。


と、前半はまあ正直言ってあんまりのめりこめていないんだけど、中盤以降は俄然面白くなってくる。具体的には3巻に入ったあたり。まあときどき読んでて引っ掛かりを感じるところもあったけど。浅羽と伊里野の逃避行話。浅羽の微妙なへたれっぷりがまさに1巻のあたりで俺が求めていた感じでツボをついた。たいてい逃避行みたいないつか限界が来るタイプの展開はあっけなく終わったりするものなんだけど、逃避行の終わりもあっけない感じを受けなかった。やっぱりそこで盛り上がりきっちゃわないようにされてるんだろうなあ。
好きなエピソードは無銭飲食列伝とESPの冬。やっぱり俺はこういうのが好きらしい。


あー、あと俺は挿絵とかあえてあんまり見ない方向で読んでたんだけど、そしたら水前寺のイメージがせんせいのお時間の渡部になってしまっている。なんでやねん。後のキャラはわりとそのまま。浅羽はまぶらほの主人公っぽい感じだが。まあまぶらほはちゃんと見てないんでイメージが偏っている可能性があるんだけど。


長々書いたけど、結局言いたいことは最初の一行。これは10年、いやせめて5年前に読んでいたら後々引きずるくらいにはまっていただろうになあ。そう考えるともったいない気がする。